毎朝見かける同性カップルが私の人生を変えてしまいました  

・作

私は毎朝、会社の近くのパン屋さんで見かけるカップルがいつも気になっていました。必ず二人でパンや牛乳などの朝食を買い、寄り添って帰っていきます。一人はとても可愛い女の子なのですが、相手の方は恰幅のいい中年のおじさんです。

 

仲良く帰っていく二人に年齢の差は関係ないのですが、よく見るとどうしてもおじさんではなく、太った中年のおばさんに見えるのです。

 

女の子がおじさんの腕を抱いて嬉しそうに歩いて行く後姿は歳の離れたカップルに見えますが、私にはどうしても不自然に見えました。

 

ある日の仕事帰り、私が偶然入った小さなお店にこの二人がいました。おじさんの姿をしていてもその人はお店のママさんで、女の子はそのお店の手伝いをしているホステスさんでした。

 

私は驚いて「僕は毎朝、お二人でパンを買って帰っていくのを見かけるんですよ。仲良くていいですね」というと、ママさんは「あら、恥ずかしいわ。一緒に暮らしているのが分かってしまうわね」と言って笑いました。

 

女の子も恥ずかしそうに下を向き、「私たち見られていたのね」と言いました。するといきなり、ママさんは私を見て「ひょっとして、あなたもこちらの世界の人みたいね、そうでしょ?」といったので、私はつい「実はそうなの」と言ってしまいました。

 

ママさんは私を見て「幾ら男の姿をしていても私には分るのよ」というと、女の子の方を見て「この子も見た瞬間にそう感じたわ。そうよね、ミミちゃん」と言いました。

 

私は普段会社では男性の姿で生活していますが、家に帰ると女になります。女に戻ると言った方がいいかもしれません。それが本当の姿だと思っているからです。

 

するとママさんは「あなたにこの店は似合わないね。あなたにピッタリなお店を紹介してあげる。ここに行ってごらんなさい」と言ってお店の名前と簡単な地図を書いてくれました。

 

そのお店はママのお店から直ぐ近くの同じような造りの小さな店でした。カウンターの中には髭を生やしたマスターが一人、外には小柄な女の子が一人いました。でも、私はその子が男の子だと直ぐに分かりました。

 

私はママさんから紹介されて来たことを告げると「それはよかった。彼女が君を紹介してくれたんだね。僕は君を一目見て直ぐにこちらの世界の人だってわかったよ。女の姿になったらきっと可愛いだろうな」と言いました。

 

マスターはお店の女の子の方を見ながら「彼女は大学生なんだけど、卒業したら地元に帰るっていうんだ。男に戻って地元の会社で働くらしい」と言い、「そのことを知っているママが君にここに来るように言ったんだ」と私に言いました。

 

そして、「今日は無理だから今度来る時は僕に女の姿を見せてくれないか?」と言ったのです。私は、この世界の人たちはママさんもマスターも一目見ただけで人の心や性癖が分かってしまうんだと思い、驚きました。

 

その日はマスターやお店の彼女と楽しく過ごし、いつの間にかお手伝いをしながら自分が女言葉になっているのに気が付きました。

 

その週末、私は初めて女装をして外へ出ました。今までは家の中だけで外へは出られなかったけれど、マスターの顔が見たくて急いで出かけていきました。

 

開店前にお店に着いた私がドアを開けると中にいたマスターが驚いたような顔で私を見ました。私が「おはようございます。今日はお手伝いさせてもらっていいかしら」というと、マスターは「綺麗だよ。君が来てくれると大助かりだ」と言って迎えてくれました。

 

マスターは「ママから紹介してもらったから名前はマミーではどうかい?」といわれ、その日から私の名前はマミーになりました。そして、お店の混む週末だけお店に出るようになりました。

 

そして年が明け、今までいた女の子は卒業すると実家へ帰っていきました。週末にお店に出る私は、「二人になるとなんだか寂しいわね」というとマスターは「僕もだよ」と言いました。

 

そして、お店の片付けを終えて店を閉めた明け方、マスターから「帰りに僕の家に寄らないか?」と言われました。私はいつかそうなる予感はしましたが、その日が来たと思いました。

 

お店を出て少し歩くと前を歩いている二人連れが目に入りました。それはママさんとお店のミミちゃんでした。私が「ママ、ミミちゃん、おはようございます」というと「あら、そちらも二人連れなのね」と言って微笑みました。

 

そしてママは「凄くお似合いのカップルよ。私、あなたを見た時からマスターにピッタリだと思ったの」と言ったのです。

 

私は恥ずかしくなってマスターの後ろに隠れたのですが、みんなに笑われてしまいました。そしてその日、私はマスターに女にされました。初めてだった私は涙を流し、その痛みに耐えました。それは私の処女喪失の痛みでした。

 

それからしばらくして私は会社を辞め、マスターの家で一緒に暮らすようになりました。名前はマミーではなく「真美」になりました。

 

お店から朝帰るとお風呂に入って私は毎日の様に彼に抱かれます。そして、マスターはいびきをかいて眠ってしまいます。私はお昼ごろに目を覚ますと主婦のように家の掃除や洗濯、そして食事の用意をします。

 

二人で朝食兼昼食を済ませ、夕方になると夫婦でお店に向かいます。時々、開店前のママさんとミミちゃんに会います。ママは「良いわね、ご夫婦でご出勤?」と言ってからかいます。私は仲良しになったミミちゃんと女同士のおしゃべりするようになりました。

 

考えてみると毎朝見かけたママたち二人がきっかけで私の生活が変わってしまいました。でも、それによって私は女の幸せを手に入れることが出来ました。いつかは好きな男とこうなりたいと願っていたから、私はママたち二人に心から感謝しています。

(了)

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