十年越しの再会が教えてくれた愛の温度
十年前、私は大切な人と別れを選んだ。
理由は単純だった。若さゆえの意地や、未来への不安。お互いに好き合っていたはずなのに、素直になれず、違う道を歩くことにした。
それから年月が過ぎ、私は結婚と離婚を経験し、仕事に追われる日々の中で恋愛から遠ざかっていた。
そんな私の前に、突然あの人が現れた。
同窓会の夜。にぎやかな空気の中で、ふと視線が合った瞬間、時間が止まったように感じた。
昔と変わらぬ瞳の奥に、当時よりも深い輝きを見つけた。
「久しぶり」
「本当に…元気そうでよかった」
たったそれだけの言葉が、胸の奥にしまい込んでいた感情を呼び覚ます。
あの頃のようなときめきに、戸惑いながらも心が震えていた。
二次会が終わり、自然と二人きりになった。夜風に吹かれながら歩いていると、何も言わなくても互いの距離が縮まっていく。
寄り添うように並んで歩き、気づけば彼女の手を取っていた。
ホテルへと向かう途中、彼女が小さく笑った。
「こんな展開になるなんて、想像もしなかったね」
「俺も。だけど…不思議と自然だ」
その夜、私たちは再び惹かれ合った。
ただ欲望に任せるのではなく、確かめ合うように触れ合い、互いの存在を大切に抱きしめた。
大人になった今だからこそ、言葉以上に伝わるものがある。
「あなたといると、昔の自分に戻れる」
「いや、きっと違うよ。今の君だから、こんなにも愛しい」
過去の後悔や未練を超えて、そこにあったのは新しい愛の形だった。
若い頃には気づけなかった優しさ、思いやり、そして「一緒にいることの安心感」。
それらが胸の奥に静かに広がっていく。
朝、窓から差し込む柔らかな光の中で、彼女は微笑んだ。
「これから、どうする?」
その問いに、私は迷わず答えた。
「もう二度と離したくない」
その瞬間、彼女の瞳が潤み、強く私の手を握り返した。
再会は偶然だったかもしれない。
けれど、あの夜がなければ私は再び人を愛することの温かさを知らずにいた。
大人だからこそ、痛みも挫折も知ったうえで出会えた新しい恋。
それは決して激しいものではないが、静かに、確かに、私の心を満たしている。
今も彼女と共に過ごす時間は穏やかで、何よりもかけがえのないものになっている。
あの再会が私の人生を変えたのだと、心から思う。
(了)
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