元カレとの再会、欲望に溺れた夜

・作

きっかけは、偶然の再会だった。

会社の取引先との飲み会が終わり、帰りの電車に乗ろうとした時、背後から名前を呼ばれた。

「……奏?」

その声を聞いた瞬間、記憶が一気に蘇った。大学時代、誰よりも私を知っていた男。

元カレの遥(はるか)だった。

「こんなところで会うなんて、奇跡だな」

スーツ姿の遥は、昔の無邪気な印象とは違い、どこか危うい色気を漂わせていた。

私は断る理由もないまま、彼と二人きりでバーへ向かった。

グラスを交わすうちに、どこか懐かしく、でも確実に“危険”な空気が流れはじめた。

「……結婚してたんだよな?」

「うん。でも、離婚した。2年前に」

「俺もだよ。1年で終わった。……お互い、似たようなもんだな」

アルコールが回るにつれ、彼の視線は露骨に私の鎖骨や唇を見つめるようになり、呼吸が妙に熱を帯びた。

「……奏、今夜、うち来ないか?」

その言葉を拒む選択肢は、私にはなかった。

玄関に入った瞬間、彼は私を抱き寄せてキスを落とした。

甘いとか優しいなんて言葉では言い表せない。

長く押し殺していた欲望を解き放つように、彼は私の髪を乱し、唇を舐め、首筋に舌を這わせてきた。

「ずっと、こうしたかった……」

乱暴だけど、どこか丁寧で、まるで私の“奥”を思い出して確かめているようだった。

コートを脱がされ、シャツのボタンが一つずつ外されるたびに、下着の上から乳首を撫でる指が生々しくて、震えが止まらなかった。

ソファの上に押し倒され、彼が跪く。スカートをたくし上げられ、ショーツ越しに舌を這わせてくる。

「んっ、やっ……そこ、だめ……」

「奏、こんなに濡れてる……忘れられなかったんだな」

パンティをずらして、生の舌で直接舐め上げられた瞬間、頭の中が真っ白になった。

柔らかな舌先が、クリトリスを何度も執拗に刺激してくる。

「あっ……だめ、そんな……っ、ああ……ッ」

腰を浮かせ、声を堪えられないまま達してしまった。

「まだ、終わらないよ」

濡れきった私の中に、遥が自分のモノを押し当てる。ぬるりと入ってきた感覚は、昔と何も変わらない。

「はぁっ……こんな奥まで……っ」

「久しぶりのくせに、締まりすぎ……っ、気持ちよすぎてヤバい……」

体を絡め合いながら、何度も突かれるたび、理性が崩壊していく。

彼の腰使いはゆっくりだったはずが、私の反応を見て徐々に深く、速くなっていく。

「奥、当たって……イキそう……っ」

「まだだよ、もっと味わえっ」

仰向けで責められたあと、四つん這いにさせられ、お尻を掴まれながら後ろから突かれる。

愛液が音を立てて絡み、淫らな水音が部屋に響いた。

「こんなに感じやすかったっけ? もうイきかけてるじゃん」

「だって、遥のが……奥に当たって……っ、あああっ……!」

貪るようなセックスの中で、私は何度も達した。

彼も絶え間なく腰を打ちつけ、限界を迎える。

「イク……奏の中で、出すよ……っ」

「うん……来て……全部、ちょうだい……」

熱い精液が中に溢れた瞬間、身体の奥まで満たされて、涙が出るほど気持ちよかった。

しばらくして、私たちはベッドで汗を拭き合った。

「……まさか、また抱くことができるなんて思わなかった」

「私も。……けど、たぶん、また求めちゃうよ」

これは一度きりの関係じゃ終われない。そう確信した。

恋愛じゃない。愛情でもない。ただ、剥き出しの欲望が私たちを繋げていた。

この夜から始まる“関係”が、どこへ向かうのかなんて、まだ考えたくなかった。

翌朝、彼の部屋の窓から差し込む朝日で目が覚めた。

隣に寝ている遥の寝顔を見つめながら、自分の中にある罪悪感と満たされた余韻が、複雑に混ざり合っていた。

ベッドの中でぬくもりを感じながらも、理性が少しずつ戻ってくる。

そしてふと、自分の身体に残された赤い痕や、シーツの奥に滲んだ跡を見て、昨夜の情事の激しさを再認識した。

「……夢みたいだったな」

ぽつりと呟いた私に、遥がうっすらと目を開けた。

「現実だよ。もう逃がさないって決めたから」

そう言って私の髪を撫でる、その手の温もりに胸がぎゅっと締めつけられる。

恋人でも夫婦でもない。ただ、身体を重ねた関係――だけど、その眼差しには確かな感情が宿っていた。

「また来る?」

「……来ない方が、きっといい。でも……行くと思う」

私の返事に、遥は何も言わず、ただ微笑んだ。

あの頃の彼よりもずっと大人になっていて、それがまたズルいと思った。

別れ際、彼が私の首筋に軽くキスを落とした。まるで所有の証のように。

駅に向かう途中、股間に残る鈍い熱と、インナーを濡らす愛液の名残が生々しくて、身体はまだ昨夜の余韻から抜け出せずにいた。

心も体も、とっくに彼に支配されている。

もう戻れない。わかっているのに、私の足は、また彼の部屋へと向かうだろう。

(了)

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