元カノの性癖

・作

私が就活を始めたのは、大学3年生になってすぐだった。

大学4年生は、とにかくのんびり遊んでゆっくりしたい。その思いから、早めに就活を開始して、大学4年生になる頃には、就職先が決まっている状態だった。

 

私の就職先の会社は、新入社員の獲得に凄く力を入れていた。

毎月、内定獲得者を集め、交流会・懇親会を開く。最初の数時間は、大きな会議室で会社の説明や現社員との交流をして、より会社のことを知ってもらう時間。

その後、居酒屋に移動して飲み会が開催される。

 

私は早めに内定を獲得していたこともあり、第一回目の懇親会から皆勤賞。しかも内定承諾もしていたので、人事の社員はまるで私も、内定者を勧誘する側のように扱っていた。

 

回を重ねるごとに参加者が増えていく中、飲み会で同じ席になった男性と話が弾んだ。

名前は小嶋くん(仮称)。背が高くて、ガタイのいい人だった。

小嶋くんは私と最終面接が同じだったこともあって意気投合。内定を獲得してるものの、まだ他企業を迷っている小嶋くんは、既に就職を決めている私の話をすごく真剣に聞いていた。

 

交流会で小嶋くんと会うようになって、何回か経った頃。

交流会に複数回参加したことのあるメンバーで二次会に行くことになった。

この企業は元々、8割近くが男性社員。当然、内定者もほとんどが男性で、この二次会に参加したメンバーは、私以外全員男性だった。

 

最初はお互いの就活状況や大学の話で盛り上がっていた。

けれど、酒が回ってくるにつれ、恋愛の話になっていった。

 

当然、逆ハーレム状態なので、話題の中心は私。

皆が期待の目で私に彼氏がいるのか問うたが、その当時私は女の子と付き合っていたので、期待通りでも期待外れでもない返答をすることになった。

 

彼女がいるという言葉に、もちろん驚かれたが、興味の方が強かったらしい。

女の子同士は、どんなセックスをするの?

そんな質問をされた。ただ、私はまだその彼女とはシたことがなかったので、こちらは少し期待外れの回答となったようだった。

 

一通り私の話を終えると、次の話の中心は小嶋くんになった。

小嶋くんは現在フリー。高校生の時に彼女がいたのが最後だったらしい。

その彼女は、性に積極的で貪欲だったそうだ。

SMプレイが好きで、彼女はドの付くM。おもちゃで彼女を放置したり、縛り痕が残ったまま学校に行ったりするのが日常だったそうだ。

そんな小嶋くんの元カノの話で二次会はすっかり盛り上がってしまった。

 

二次会が終わり、小嶋くんが駅まで送ってくれることになった。

小嶋くんは私に、もし今の彼女とそういうことになったら、攻めになるのか、受けになるのかどっちなのかと聞いてきた。

もちろん私は、攻めになる。ただ、私自身は比較的M。

だから、女性とするなら攻め。男性とするならいじめられたいと答えた。

 

その日私は、後日小嶋くんと二人でご飯に行く約束をした。

 

約束のご飯の日。

小嶋くんは当たり前かのように私をホテルに連れて行った。

小嶋くんは非常に用意周到で、綱、玩具、ゴム。何もかも持参していた。

元カノの性癖が、こんなにも小嶋くんを作り上げたのだと考えたら、関心すらした。

 

小嶋くんはやはり上手で、痛くないように、痕がつかないように私を縛り、一番気持ちいいところに玩具を当てる。

元カノほどMじゃない私を、最大限喜ばせる。そんなセックスだった。

 

少し残念だったのは、元カノの性癖のせいで、彼はお尻が開発済みだったということ。

別に開発済みであること自体は問題ないのだが、小嶋くんはお尻じゃないと最高に満足は出来ないような感じがした。

 

結局小嶋くんは、同じ会社には入社しなかった。なんなら、内定を持っていた全ての企業を蹴って、起業することにしたらしい。

小嶋くんの起業のための手伝いを数回したが、あれ以来小嶋くんと体の関係になることはなかった。

 

一夜だけのセフレ。そして普通の友達。

きっと、私よりもっと性に貪欲で正直な人とうまくいくんだろうなと思う。

 

(了)

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