密かに女装していた私がお店で働いたことがきっかけで彼の妻になりました
世の中には女装を楽しんでいる男性はたくさんいます。それはいつもの自分と全く違う人格を持った一人の女性になるという変身願望なのです。
中には自分の性に違和感があって、「女性になりたい、性別を変えたい」という願望を持った人もいますが、多くは女性に変身し、その姿を画像に収めて楽しみたいという人が多いのです。
そんな人たちのために東京はとても便利な街で、特に新宿には女装サロンや女装をして楽しめるお店がたくさんあります。ただ、一人暮らしの場合はいいのですが、家族がいる場合は下着や服、ウィッグや化粧用品などを隠しておく場所が無くて困るのです。
でも、そのような人たちのために服や靴、装飾品などをロッカーに預けて置けて、シャワーや化粧の出来るスペースのある施設があるのをご存じでしょうか?
私も多くの衣装や化粧道具をロッカーに入れて、会社帰りに女装を楽しんでいる女装者の一人でした。場所も女装倶楽部やバーがたくさんある近くで、帰る時にはまた着替えをして帰ることが出来るのでとても便利なのです。
更に、通販サイトから家に届くと困るような女装用品を受け取ってくれる私書箱センターも同じビルの中にあるので、私はいつも使っていました。
そんな私が女装者の集まるあるお店で一人の女性に声を掛けられました。その人は私が女装サイトに投稿しているのを知っていて、私に自分のお店でアルバイトをしないか誘ってきたのです。
私はその当時、既に30代の半ばを過ぎていたので、女装者としての自分に水商売での商品価値があるとは思っていなかったので驚きました。
でも、SNSの力は私が思っていた以上に大きく、「あなたは自分が思っている以上にネットの世界では有名なのよ。週末の1日だけでいいからお店を手伝ってくれないかしら」と言われました。
そのことがあって以来、私の気持ちは大きく揺れ動きました。ネットに自分の画像を載せて楽しんでいた私がリアルにお店に出て接客をするという夢の様なお誘いなのです。
私は自分の年齢ではこれが最後のチャンスだと思いました。ただ、お店に出るようになると自分が思っていた以上に私のファンの男性が来店してくれたのです。
今まで画像だけだった私の姿が生で見られるという新鮮さがあったのでしょう。そして、多くのファンの中で自分だけが直に会って話が出来る喜びに皆お店に殺到したのです。
そして、ある日のこと、私は一人の男性から告白をされました。私は人生で最後のチャンスを全うしたら普通のおじさんに戻るつもりでいましたが、何と恋人が出来てしまったのです。
私には女になりたいという願望は強くありません。でも、その男性は真剣に私に迫ってきました。そして、とうとうある日の帰り、私はその男性の女にされてしまいました。ただ、私には拒否しようという気持ちはありませんでした。
女装が趣味の私が、男性に身体を奪われ、初めて女の悦びを知ってしまったのですが、後悔はしていません。告白された日から私は女装趣味の全て止め、SNSも閉鎖してネットの世界から姿を消そうかと思いましたが、私にはどうしてもそれが出来ませんでした。
その男性がゲイであることは分かっています。最初は私の身体を弄ぶことだけが目的だと思っていたのですが、そのうち彼と真剣に話すようになり、最後は私を妻に迎えたいと言ってくれるようになりました。
そして、私はお店も会社も辞めて彼の胸に飛び込む決心をしました。でも、今までの生活を全て捨てて女になるということは大きなリスクがあります。単に趣味を辞めるという訳にはいかないのです。それでも私は彼の気持ちに押されて、それから一緒に暮らすようになりました。
今まで40年近く男として暮らしてきた私が急に女になるのはとても大変なことでした。でも、彼は私を妻として愛してくれます。そして、夜は毎日の様に抱かれ女の悦びを感じるようになっていきました。
ただ、本当の女になるには私には大きな壁があります。身体を女性に変えるのは簡単なことではありません。でも、彼は身体にメスを入れて私が女の身体になることは望んではいないのです。
身体はそのままでいいから一緒にいたいのだと言います。でも、名前だけは正式に変えよう。そして、自分の戸籍に私が入れるようにしたいと言うのです。
私は名前の変更を家庭裁判所に申請し、更に彼の養子になる手続きをしました。正式には夫婦ではありませんが同じ苗字になり、名前も女性の名前に変更することが出来ました。
それ以来、私は彼の事実上の妻として生活しています。そして、周りの人たちも私が男性だということを知らずにお付き合いしています。
子供がいないので、女性として新しい仕事を見つけようとしましたが、私の年齢では前の仕事の様な職種は直ぐに見つかりません。
だから、私は近くのスーパーで昼間パートの仕事をすることにしました。パートのおばさんでもいいから、仕事が終わったら買い物をして、夕飯の支度をしながら彼の帰りを待つ生活をしています。
一人で家にいるとかつて女装するために借りていたロッカーや化粧室のことやお店で働いていたことを思い出しますが、スッピンに近い薄化粧でも、彼に女性として扱ってもらい妻として暮らしている今、私はとても幸せです。
(了)
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