オンラインゲームで知り合った同い年の女の子と付き合っていた。

・作

大学生の頃、私はオンラインゲームで知り合った同い年の女の子と付き合っていた。

その子の名前はトモコ(仮名)。

 

私はオンラインゲームで必ず、男キャラを使って、男口調でプレイしている。いわゆるネナベというやつだ。

そこそこのイケメンキャラで、SNSなどを利用しながらゲーム内プレイヤーイベントを開催していた私は、そのゲームではそこそこの有名人だった。

 

別に中身が女であることを隠しているわけではないが、聞かれるまで自分から女であることを明かしたりはしない。ゲーム上でトモコと知り合った当初は、トモコも私が男の子だと思って声をかけてくれたらしい。

 

トモコから告白をしてきてくれたとき、しっかり私が女であることを伝えたが、人柄に惚れたから性別は関係ないと言ってくれた。

それからトモコと付き合うようになったのだ。

 

トモコとは、オンラインだけでなく、現実でもデートを繰り返していた。

月イチ程度では現実でも会っていたと思う。

トモコのゲームキャラは、幼女で可愛らしい見た目。現実のトモコはちょっとぽっちゃりしていて、私より少し身長が高い地雷系女子。正直ギャップはあったものの、話していると間違いなくトモコだったので、何度も会ううちにその違和感は消えていった。

 

それに、トモコの方がギャップを感じたであろう。

私のゲームキャラは細マッチョのイケメン。一方現実の私は、身長が低く、丸顔。

それでもトモコが私を好きでいてくれたのは、ゲーム上での会話の仕方や男口調をそのままに現実でも会っていたからだろう。

 

付き合い始めて半年。夏のお買い物デート。

猛暑日に炎天下で、あまりにも暑かった私たちは、涼むためにどこか店に入って休もうという話になった。

けれど、同じような考えの人たちで飲食店は満席。

東京の都心でデートをしていたので、雑貨屋や服屋は外国人でいっぱいだった。

 

唯一空きがあるのが一か所しかなかった。

 

そこは、少し料金高めのラブホテル。

ラブホテルということで、処女のトモコは抵抗があるようだった。

しかし、最近は『ラブホ女子会』が流行っていることもあって、私たちはそのラブホで涼むことにした。

 

料金がやや高めだったこともあり、設備も良く、サービスも充実していた。

私たちは大きなベッドでワイワイ転がりながら、デート中に買った雑貨を広げて楽しんでいた。

雑貨で遊んだり、ゲームの話をしたり。

まさに『ラブホ女子会』を楽しんでいた。

 

ある程度涼めたものの、汗っかきの私は、ベタベタする体をどうにかしたく、軽くシャワーを浴びることにした。

 

シャワーを浴びて部屋に戻ると、トモコがテレビを見ていた。

ラブホのテレビと言えば、アダルトビデオが流れているもの。テレビをじっと見ているトモコのそばには、マッサージ器が転がっていた。

私がシャワーを浴びている間、初めてのラブホを探索していたのだろう。

 

「何してんの?」

 

私がトモコに後ろから抱きつくと、トモコはハッとしてベッドにもぐりこんでしまった。

そんなトモコが可愛くて、私は少しトモコをいじめてみることにした。

 

最初はマッサージ器を使って。次第に私の手で…。

 

トモコはその日、処女を私に捧げた。

 

とはいえ、私は女。ブツがついているわけではないので、実際は処女のままなのかもしれない。

けれど間違いなく私たちはその日、カップルとして一歩進展した。

 

その日からだった。

トモコが私に異常なほど依存してきたのは。

 

オンラインゲームの私のログイン状況を把握し、誰と遊んでいるのかもすべてチェック。

女キャラのプレイヤーと遊ぶのを禁止し始めた。

 

相手は女キャラだが、現実は男かもしれない。

現実で会ったこともない。名前も知らなければ、声も知らない。

そんな人たちと遊んでいるだけだと伝えても、トモコは聞く耳を持たなかった。

 

私にかまってもらうためか、被害妄想までし始めた。

共通の友達のプレイヤーにストーカーされているなどと、嘘の相談までしてくる始末。

 

きっと、初めての経験で私への気持ちが深まってくれたんだろう。

しかしそれが、良くない方向へと進んでしまったのだ。

 

だんだんと腹が立ってきた私は、トモコからのゲームの誘いも、デートの誘いも断るようになっていった。

トモコとの連絡も避け始めた頃、私のゲーム内の友人から連絡があった。

 

私がゲーム内で自身を男性と偽り、女の子をたぶらかしている。私のキャラに関わってはいけない。

 

そんな情報が作成されたての無名アカウントからさらされていると。

 

その事を教えてくれた友人は、私が女で、トモコと付き合っていることを知っていた。トモコの依存性や束縛についても。

その友人は、犯人はゲーム内でそこそこ有名人の私を孤独にさせることで、私を自分だけのものにしようとしているんじゃないかと推理した。

 

その情報がある程度広まった頃。

私は孤独になるどころか、むしろ仲間が増えた。

元々、男だと自称したこともないため、中身が女でも嘘は言っていない。むしろ、私のおちゃらけキャラに、より親しみやすくなったと。

残念ながら、犯人の思惑通りにはならなかった。

 

少しして、トモコから連絡があった。

読むのに10分以上かかる長文メッセージ。

読む気にもなれなかったので、あまり内容は覚えていない。

一緒にいると寂しくなるから別れてほしい。そんなような内容だったと思う。

 

スタンプだけの返信をし、私は一切の連絡をトモコと取らなくなった。

 

トモコはそれ以来、ゲームにもログインしなくなった。

 

(了)

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