BL漫画を再現したい!
私が中学生の頃の話。
私は美術部に所属していた。美術部と言っても、多くの人が想像しているような絵画を書くわけではなく、イラストばかり描いていた。
活動内容だけ見れば、漫画研究部と呼ぶ方が合っているだろう。
美術部はほとんど女子しかいなくて、特に私の同級生はオタクたちばかり。
それまで、あまりアニメを見たことがなく、話題作くらいしか視聴していなかった私も、同級生の部員に影響されてアニメオタクになった。
最初は純粋なアニメオタク。そこから同人誌に手を出し始め、次第に腐女子のオタクになっていた。
腐女子というのは、男性同士の恋愛模様を描いたBL作品が好きな女の子のこと。私もいつの間にかその腐女子の仲間になっていた。
そんな腐女子な私だったが、BL作品と同じように、私も同性愛者の節がある。
正確には両性愛者なので、男女どちらでも恋愛対象になるのだが、中学生の頃はBL作品にハマっていたこともあり、女の子に好意を抱くことが多かった。
そんな中、私の心を奪ったのは、同級生で美術部員、そして腐女子のユウ(仮名)だった。
ユウは初めて出会った時から、どれくらいの数のアニメを見ているか分からないくらい、知識豊富なオタク。
少々ガサツだが、描くイラストはとても可愛く、ギャップのある子だった。
ユウはかつての大震災の影響で、小学生の頃に東北から関東に越してきた。当時から顔見知りではあったが、中学生になり、同じ美術部に所属してからグッと距離が縮まった。
ユウも私も母子家庭ということで意気投合。
後に美術部の部長と副部長になるほど、仲もよく、美術部の顔と言える存在でもあった。
きっとユウは私のことを友達としか考えていなかっただろうが、私にとっては好きな子だった。
私とユウは、学校でもアニメやBLを語り、放課後もユウの家でオタ活に明け暮れていた。
ある日の放課後。ユウの家でBL漫画を一緒に読んでいた時、ふとユウが言った。
「おしりって気持ちいいのかね?」
BL作品では、男性には穴がひとつしかないため、おしりの穴にブツを挿れる。
もちろん作品内では、顔を赤らめながら喘いでいるわけだが、普段出す方でしか利用したことのない穴に挿れても気持ちいいものなのか、私も疑問に思っていた。
「試してみる?笑」
ユウの母は、一日中仕事をしているため、ほとんど家にいない。
2人きりの時間に、BL漫画の再現をすることになった。
2人ともアニメオタクで、BL好き。もちろん、BL以外にもNLやGLも見ているため、行為に対して無知ではない。
キスは大事な人との為に取っておこう。
そう言って、互いの胸や大事なところを下着の上から触る。
ぎこちない触り方なので、始めこそ何も感じなかったが、次第に互いのイイところが分かってきて、そこを攻め続けた。
BL漫画の再現のはずが、おしりに手を伸ばすことはなく、互いの気持ちいいところだけを触り続けた。
どれくらい時間が経ったかわからない。ユウの親が帰ってきた音で、私たちは行為を止めた。
その日はそれだけだったが、二人きりでBL作品を鑑賞して遊ぶときは、ほぼ毎回そういった雰囲気になった。
ユウはどんな気持ちだったのだろう。ただの好奇心なのか、それとも…。
ユウに好意を抱いていた私は、それがやりたくて、他の友達からの誘いがあってもユウを優先した。
そんな関係が続いて少ししたころ。
ユウの母親が再婚し、ユウに妹ができた。妹は父の連れ子で、放課後にユウが家で一人になる時間がなくなってしまった。
二人きりになれる空間がなくなってしまったことで、私たちの時間もなくなり、いつしかただの友達に戻っていた。
私のユウへの好意も薄れていってしまい、本当にただの友達に戻ってしまったのだった。
(了)
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