自習時間に出された課題
高校三年生、秋。
大学受験に向けて、皆が必死に勉強する中、私はのんびりしていた。
というのも、私は夏に推薦入試で大学受験を終えていて、これ以上学習を積み重ねる必要がなかったからだ。
私の通っている高校は、一応進学校を名乗っている学校だったので、センター試験だけは受けるように言われていた。
そのため、最低限の学習は必要だったが、記念受験の感覚だった私は、自主学習はほとんどしていなかった。
そんなその頃の私は、30代半ばの物理教師の男が好きだった。
その『好き』が恋愛感情なのか、教師への憧れなのか。
どちらかと断定するのは難しかったが、とにかく好きだった。
SNSでよく見る、卒業式に告白して付き合うというようなものに憧れていた。
私の目線に気づいていたのか、物理教師と私はよく会話を交わすようになった。
受験勉強に夢中な学生たちに反して、のらりくらりとしている私と他愛もない会話を交わす。
お互いその時間が好きだった。
私たちの関係は、少しずつ生徒と教師を超えてきていた。
冬が近づいて、どの教科も授業としてのカリキュラムを終えた。
一日中、ほとんど自習時間となり、まともに教師が講義を行うのは体育だけとなった頃。
その日も、大学が決まっている私からしたら退屈な自習時間で埋め尽くされていた。
でもその日は、自習監督のほとんどが私の好きな物理教師で、いつもよりは退屈じゃない時間が続いていた。
昼休憩の後、ふとその物理教師と2人きりになった。
彼は、私にひとつの問題を出した。
「俺のこと好き?」
教師からの問題だ。正解を出さなければならない。
「そうですね」
「じゃあさ…」
そう言って、物理教師は私に耳打ちした。
それは、
物理教師が監督をつとめる次の自習時間。
その時に、周りにバレないようにひとりでシてみて。
毎日自習ばかりで退屈だった。
そこに、教師からひとつの課題が出されたのだ。
私は次の自習時間に、自分のあそこに手を伸ばした。
その時の私は偶然にも、一番後ろの席、窓側の角の席だった。
生徒たちが自分から見て右側で、必死に勉強している。
私は、左手でスカートのチャックを少しだけ下げ、そこから手を入れた。
右手では、机の上の教科書を捲りながら、左手で自分のあそこをイジる。
音を出さないように気をつけながら、声を出したり、息を荒らげたりしないようにしながら。
教壇で椅子に腰をかけて本を読んでいる物理教師を、ちらりと見る。
物理教師はこちらを見て、少し微笑む。
ニヤリとした笑みにも見えた。
彼は、何度も足を組み直していて、その行動はどこか不自然だったように見える。
私たちは、周りの生徒たちに気づかれてしまうかもしれないというスリルと、快感を楽しんだ。
卒業式。
結局私たちは何もなかった。
なんとなく、あの自習時間以上の体験が出来ないような気がしたからだ。
これが私の、短い青春。
高校で出された一番難しくて、一番楽しかった課題の話。
(了)
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