雨宿り

・作

 ゼミのメンバーでとある山奥に実習で生態調査に訪れた。

 近場の人はバス。遠方からは車。移動手段はそれぞれで現地集合。川やら畦地やらを調査したあと、少し雨に降られたので、ひどくなる前にと夕暮れ時に解散。

 バス組は二人だけだった。私と、優さん。バスは1時間に1本。逃してしまい、1時間半は先だった。

 古いバス停で、待つことになる。屋根と壁はトタンで、骨組みは木材。一つ長いベンチが置いてあるだけ。点灯すらなく、薄暗かった。

 ベンチに少し間隔をあけて、座った。

「…優さん、結構近くに住んでるんですか?」

「うん、そうだよ」

 優さんとそんなに親しくはなかった。一学年違うだけでもだいぶん先輩に思えた。でも、誰にでも愛想よく話しかけてくれるムードメーカー。男性にしては長い髪を一つに括っているせいで、ちょっとやんちゃっぽく見えるが、とても穏やかな人だ。

「わ、わたしも結構近くて…。といっても5駅は先なんで街に近いんですけど…」

「俺もその辺りだよ」

「そうなんですか!」意外な共通点に嬉しくなる。

「大学生向けのマンションってあの辺りに集まってるよね」

「探すとあそこにしかなかったです…」

「ハハッ」

 楽しそうな笑顔に頬が熱くなる。格好いいと見惚れる。惹かれるようにじっと見つめてしまった。

 その視線の意味に気付いたのか、優さんはすっと表情を消した。

「…香陽ちゃんはさ」

「はい…」

「今、どういう状況か分かってる?」

「え?」

 隣り合っていた優さんがすぐ近くにいて、腰に手をまわしてきた。ぐいっと引き寄せられる。彼の胸にすっぽりと収まった。

「…雨で服が透けてる女の子にそんな顔されると、ちょっと困るんだけど」

 見ないようにしてたのに。そう熱がこもった声で囁かれ、太ももに固いものが当てられた。ぞくっと背筋に刺激が走った。

「わ、わたし…と、ですか?」

「うん」すりっと頬ずりされる。「前から可愛いと思ってた…」

 甘えるような声で言われ、堪らなくてぎゅっと彼の服を握りしめる。それが答えだった。

 

 舌が絡む濃厚で深いキスをされて、呼吸しようと夢中になった。強く抱き寄せられながら、下着の間から手を入れられて胸を揉みしだかれ、緊張が甘くほぐれていく。快楽の波がだんだんと強くなってくると、積極的になれた。私から抱き着いて、彼の手を誘導していく。濡れた服が張り付いてくる感覚すら、気持ちよかった。

 はぁはぁ。乱れた息はもう交じり合って、どちらのものか分からなくなっていた。

「ぐっちゃぐちゃ…」中に指を入れた彼が、興奮した様子でつぶやく。

「やあ!」恥ずかしかったが、快楽が制御できない。

 優さんが上着を脱ぎ、ベンチに敷いた。そこに横にされた。

「背中、痛くない?」

「だいじょぶ…」とろん、と答える。やさしいなぁとぼんやり見惚れていた。

 ガチャガチャ。ベルトを緩める音に、きゅっと奥が締まるのが分かった。刺激を期待してだった。

 優さんが覆いかぶさってくる。腰に手がまわされて持ち上げられた。熱いものが当たって、はぁっと吐息する。ぐっと先端が入ってきて、背中が反れる。そのまますべて流れるように入ってきた。

「あっ、んンっ!」

「あつ…ッ」

 身震いする私と、上で目を瞑って荒い息遣いをする優さん。お互い、あまりの心地よさに驚いていた。

「…ちょっ、ヨすぎ…だろ…」

「あ……あぁ」ちょっと怒ったように言う彼に、安堵した。私で気持ち良くなってくれているんだと。

 ゆさゆさと少しだけ動く優さん。動きと同じリズムではっはっと息を吐いていた。顔が真っ赤だった。そんなに我慢することないのに、と彼の頬に手を伸ばす。頬を撫でて、耳を撫でた。

「ンっ!?」ブルッと全身を震わせる優さん。

「え。」突然すごい力で抱きしめられ、瞠目する。瞬きしていると、中に熱いものが注がれた感覚に叫んだ。「…あぁアッ?!」

 じんと手足の先まで甘い痺れが行き渡る。はーっと深い息を繰り返した。

「ま、まさ…さん…?」

 名前を呼ぶと、唸るような声が返ってきた。

「…………。出しちゃった…」

 ですよね。そう心の中で返答した。彼はぐしゃぐしゃと頭を掻きながら、足は投げ出していた。自棄になっているように見えた。

「あの……ごめんなさい…?」

「…いや……謝らないで…」

 居たたまれないらしく、視線を合わせてもらえない。胸に顔を伏せられて、少しこそばゆい。

「……耳、弱いんですか?」

「ん…」そのままで頷かれ、こそばゆい。

「あの……気持ち良かったならよかったです…?」

「香陽ちゃん……」

 がっくりと肩を落とす彼を見て、新鮮な心地だった。

 

(了)

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