トランスジェンダーひろのオトコとオンナ!全部魅せるわよ10
ツトムはもういない。
彼の部屋はもぬけの殻になってしまった。私と別れると告げた翌日にはそそくさと通っている大学の近くのアパートに引っ越して、そこで新しい暮らしを始めたらしいの。
私は心の真ん中に穴が開いてしまったようで、けだるい気持ちとカラダに毎日が欝で仕方がなかった。
私の暮らしは乱れに乱れたわ。仕事が終わると駅近くのショットバーで独りお酒を飲んでいると結構声をかけられたの。仕事の後、私は一度自宅に帰り、オンナの姿になっていたから。
あっ、そうそう。
ツトムが大学近くのアパートにねぐらを移したのをきっかけに私もすぐに会社近くの借家を借りてそこに移り住んだの。
ツトムのいない家にいても仕方がなかったし、彼との思い出がたくさんあるところにはいたくなかった。
仕事は毎日とても忙しく、気を紛らわすことは困難なことではなかったけれど、仕事が終わり、独りになると襲ってくる孤独感というか、絶望感というか、喪失感というか、よくわからないけれど、それはひどかったわ。
そしてメイクしては行きつけのショットバーに行って独りお酒を飲んでいると男どもが寄り付き、私のカラダ目当てに体をくっつけては耳元で囁いたり、パンティストッキングごしに太ももをさわったりしてくるの。
私は無抵抗でされるがまままで、店の近くにあるラブホテルにそのまま同伴することも少なくなかったわ。そして、ほとんど無感覚でセックスするの。ツトムとの愛のこもった濃厚なそれとは雲泥の差だわ。ただ孤独を埋め合わすことができるなら何でもよかったから。
名前もどんな素性の奴かもわからないオトコとセックスをして変な病気だけは移されるのはもとより、痛いだけの交わりはイヤだったから最低限コンドームやジェルは準備していた。
気持ちよかったかって?
いいわけないじゃん、そんなセックスって言いたいところだけれどそれなりに感じてしまったのが悲しい性ね。私って根っからのスケベなのかしら?でも感じている時はすべてを忘れられたような気がするの。
「あっ! ん…っっ。もっと奥まで…挿れてっ!もっと、もっとっ!」
そんな生活を1年くらいしていたら、なんと別れたツトムからスマホに連絡があったの。内心、うれしかった。でもそんなそぶりが声に反映しないように注意しながら彼の言葉を待ったわ。
「ニィ、久しぶり。俺のこと、まだ嫌いだよね。でも聞いてほしいんだ。」
(フン。陳腐なセリフで言ってんじゃねぇよ)
心の中では憤慨して汚いセリフを思い浮かべてしまった私。でも表向きは殊勝なことをほざいていたの。
「大丈夫。あんたと別れてから、結構オトコと遊んでたんだよ、私。これでもそれなりにモテんのよ」
「あの…実は彼女と別れちゃって…」
「それでやっばり本当に信じられる人ってニィしかいないって思うようになって…だから」
「だから何?!」
私は思わず大きな声を上げてしまったの。
「…いいよ。ヨリを戻したいのね、私と。いいわよ。私もこの1年不安定な精神状態でいたし、ツトムが戻ってくれればきっと元のようにハリのある生活になれるってわけだし」
ヨリが戻っても絶対に元の二人にはなれないのはわかっていてもそういうしかなかったわ。
「ありがとう、ニィ。じゃ、来週一度ニィのところへ遊びに行ってもいいかな?」
そういった彼の歓ぶ声を聞きながら携帯電話をきった私の心は今までと全く変わらず氷のように冷たかった。
でも…
その電話の後、ツトムとの楽しかった思い出をふりかえっていたらなんだかオナニーがしたくなってしまい、手は自然とパンティの中に滑り込んでいたわ。
「あっっ、いやっ!でも…もっと!ツトムっ、もっと奥まで…あっ、あぁっっっっっっ。ツトムっ!」やっぱりあなたしか愛せないよっ」
ペニクリをしごきながらツトムに犯されているシーンを思い出して思わず悶え、乱れてしまった私。
悲しい性ね。
(了)
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