再会から始まった大人の秘密な恋
学生時代、心の奥にそっと仕舞い込んでいた人がいた。名前を聞くだけで胸が高鳴り、目が合えば言葉を交わせなくなるような存在。けれど卒業と同時に連絡も途絶え、もう二度と会うことはないと思っていた。
あの日、偶然立ち寄った駅前のカフェ。混雑した店内で空いている席を探していた私に「ここ、よかったら相席しますか?」と声をかけてきた男性。振り向いた瞬間、胸の奥が熱くなった。――彼だった。学生時代に想いを寄せていた人。
お互いに驚きと懐かしさが入り混じった笑顔を交わし、自然と会話は弾んだ。近況を語り合ううちに、彼は独身であることを、そして仕事に忙殺されていることを打ち明けてくれた。私も正直に、結婚は経験したけれど今は独り身であることを伝えた。
気がつけばコーヒー一杯では物足りなくなり、「もう少し話そう」と彼の提案で二軒目のバーへ移動した。アルコールが入ると、学生時代には話せなかった本音が少しずつこぼれ落ちていく。
「実はね、あの頃ずっと君のことが気になってたんだ」
耳元で囁かれたその言葉に、身体が熱くなるのを感じた。私もまた、同じ想いを抱いていたのだから。互いに目をそらすことなく見つめ合い、気づけば彼の手が私の手を包み込んでいた。
夜の街を並んで歩きながら、自然とホテルの明かりに吸い寄せられていった。理性よりも感情が勝り、久しぶりに味わう高鳴りに身を任せてしまった。
部屋に入ると、彼の手はためらうことなく私の頬に触れ、唇を重ねてきた。長い年月の空白を埋めるように、何度も深く口づけを交わす。スーツの上からでも伝わる体温、抱きしめられる力強さに、女としての自分が解き放たれていく。
彼の指先が肌をなぞるたび、背筋に電流が走る。ブラウスのボタンをひとつずつ外され、胸元が露わになる。そこへ舌先が触れた瞬間、理性は完全に崩れ落ちた。声を殺そうとするほど、逆に身体は敏感に反応してしまう。
背中を強く抱き寄せられ、ベッドへと押し倒される。シーツに沈み込む感覚と、彼の重み。唇から首筋、そしてさらに下へと降りていく熱い口づけ。身体中が彼に支配され、息もできないほどに求められていく。
どれほど求め合っただろう。互いに溜め込んできた欲望をぶつけ合うように、繰り返し重なり合った。汗ばむ肌と肌が離れることなく絡みつき、夜が更けるのを忘れるほど続いた。彼の吐息が耳元を震わせるたび、女である自分が目覚めていくようだった。
何度も頂点を迎え、力尽きるように彼の胸に顔を埋める。乱れた呼吸の中で彼は「もう二度と離したくない」と囁いた。その言葉に答える代わりに、私は彼の指を強く握り返した。
翌朝、窓から差し込む光に照らされながら、彼の寝顔を見つめる。学生時代には手に入れられなかった時間が、今こうして私の隣にある。これからどうなるかはわからない。それでも、あの再会がもたらした夜を、私は決して後悔しないだろう。
懐かしさから始まった関係は、ただの思い出には収まらない。大人になった今だからこそ、素直に欲望と愛情を重ね合わせられる――そんな特別な恋が、確かにここから始まったのだ。
(了)
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