マッチングアプリで出会った彼との濃密な一夜
離婚を経験して数年。30代に入ってからというもの、仕事は順調でも、恋愛に対してはどこか一歩引いてしまう自分がいました。友人の結婚ラッシュが落ち着いた今、週末の夜に一人でワインを飲みながらスマホを見つめる時間が増え、「もう恋愛はしばらくいいかな」と思いつつ、どこかで人肌を求めている自分がいたのも事実です。
そんな時、同僚から「マッチングアプリなら気軽に出会えるよ」と勧められました。最初は半信半疑でしたが、プロフィールを作ってみると、思った以上にたくさんの「いいね」が届きました。最初は軽いやり取りだけで満足していたのですが、その中に一人、目に留まる男性がいました。彼は35歳、営業職で、スーツ姿の写真がとても似合う人。文章はシンプルなのに、どこか誠実さを感じさせ、会話のテンポも心地よい。やり取りを続けるうちに、自然と「会ってみたい」と思うようになりました。
最初のデートは都内の落ち着いたワインバー。待ち合わせの時、遠くからでもすぐに彼だと分かりました。プロフィール写真よりも少し日焼けしていて、スーツ姿よりもカジュアルな服装が意外にラフで親近感を持たせてくれました。最初は緊張していましたが、彼の柔らかい笑顔と自然な会話で、気が付けばワインが進み、笑い声が絶えない時間になっていました。
「二軒目、行く?」と彼が聞いたとき、私は迷いました。離婚して以来、誰かとこんなに距離を縮めたのは初めてで、不思議な安心感と高揚感が混じっていました。結局、彼に導かれるようにしてタクシーに乗り込み、彼の提案で近くのホテルに入りました。
部屋に入った瞬間、静かな空気に二人きり。ソファに座った途端、彼の手が自然に私の手を包み込みました。その温かさに、思わず心がほどける感覚。キスを交わしたとき、久しぶりに「女性として求められている」という実感が全身に広がり、理性よりも感情が勝っていくのを止められませんでした。
彼はとても丁寧で、私の反応を確かめるように優しく触れてきました。長い時間をかけて抱きしめられ、肌を合わせた瞬間、ずっと忘れていたような熱が蘇るようでした。息が絡み合い、声を抑えきれないほどに身体が応えてしまう。彼の視線や動き一つひとつが新鮮で、まるで若い頃に戻ったような感覚すら覚えました。
一夜を共にした後、シーツの中で彼と並んで話した時間も心に残っています。離婚のことや、仕事のこと、将来のこと。普段は人に打ち明けないようなことを自然と話してしまいました。彼もまた、自分の弱さや不安を語ってくれて、それが一層の親近感を生んだのだと思います。
翌朝、ホテルを出るとき、どこか夢のような気持ちと現実に引き戻される感覚がありました。アプリでの出会いは「遊び」というイメージを持っていた私ですが、この体験を通して、人と人との繋がり方は決して一つではないのだと感じました。恋愛に臆病になっていた自分が、少しずつ前を向けるようになったのも、あの夜がきっかけだったのかもしれません。
彼とはその後も何度か会いましたが、いまは恋人というよりも「大切な大人の関係」という距離感を保っています。将来どうなるかは分かりません。でも、あの夜の温もりや高揚感は、今でも鮮明に思い出せます。バツイチの私にとって、この経験は「もう一度、誰かに求められる自分がいる」という自信を与えてくれました。
マッチングアプリの出会いに不安を感じる人も多いと思いますが、時には自分を解放し、新しい扉を開いてみるのも悪くない。少なくとも私は、あの夜を通して、もう一度恋愛や人との繋がりを信じてみようと思えるようになりました。
(了)
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